待ちに待った『セイバーメトリクスの落とし穴』、読み終えました。お股ニキさん初の出版です。タイムラインでも話題になっているのも読む理由のひとつですが、なにより「お股さんが書いた」ということが重要です。Twitter野球クラスタ筆頭と言っても過言ではないですし(素晴らしい方はたくさんおります)、何より日頃のTweetでの知識・野球理解の深さは他者の追随を許しません。そして何を隠そう、ダルビッシュ投手ともTwitterでも親交があるのです。そんなことから、この本に関しては読まない理由がありませんでした。簡単に記録を残しておこうと思います。
●注めっちゃ多くて読みやすい
結論から言いますと、この本は「確実に読むべき本」と言っても言い過ぎではないです。内容の明快さ、データでの裏付け、主観的(感覚的)な判断など、わかりやすい切り口で話を進めてくれます。「落とし穴」というぐらいですから、データ偏重になりつつある野球界に一石を投じたわけで、「データばっか見るな!野球をもっと楽しめよ!」と言われている気がしました。
特筆すべきは、「注の多さ」です。人物・専門用語に注がふられており、ページの端に記載があります。注は読む人に対する気遣いであり、読みやすさに繋がります。実際本書には多くのメジャーリーガーや日本人選手、くわえてセイバー用語や野球用語・野球スラングなどが登場しています。
知らない用語が多い本は読みにくいものです。「僕セイバーとかMLB知らんしなぁ」とか、「昔の選手も知らないしなぁ」という人もいると思います。そんな方でもご安心、注がついており、簡単にその情報を知り、なおかつ現在の立ち位置なども紹介されていたりします。スラスラ読むことができるのは、このご配慮があるからですね。
●最新のトレンドだよ
本書では「野球の再定義」からはじまり「ピッチング」やら「采配」やら「球団経営」やら、最終的には「野球文化論」とテーマが多岐にわたります。実際MLBがどんな取り組みを行っているのか、新しいトレンドを知ることができます。
これまでもセイバー的な切り口で最新トレンドを知ることはできたと思いますが、「プレイヤー」「監督」「コーチ」「フロント」「ファン」「社会」といった、野球を取り囲んでいる人々を俯瞰した本は、ほとんど見たことがありません。というかはじめて読みました。それぞれのカテゴリやグループでのトレンドを抑えており、自分がどうあるべきかを教えてくれます。
もし別のタイトルをつけるのならば「現代野球総論」「野球のこれからの形」とかになるんじゃないですかね。「セイバーメトリクスの落とし穴」といいつつ、数値偏重主義批判をしているわけではないです。「多面的な現代野球の総論」として読むことができ、時代の変化を知ることができます。
個人的には本書181P「野村克也の大いなる功罪」で、我々が知らずとかかっている「野村バイアス」を払拭できればなと思っています。00年代~を席巻した野村克也氏、名著『野村ノート』による配球偏重主義。ここから脱出できない(ここまでも追いついていない)チーム・指導者も数多いです。巷では野村克也氏は大量に出版しておりますが・・・・・、おっとここまででやめておきます。
●ここで唸った
詳しい内容は読んでいただければよいので、最後に個人的に唸り声を上げた部分をまとめておこうと思います。6章の『監督・采配論』、P237「ポスト分業化時代のユーティリティ」についてです。
昨今の時代はいわゆる「分業化時代」です。先発・セットアッパー・クローザー、各ポジションの専門職、代打・代走のスペシャリストなどなど。コーチの増加なども含めて、役割が多様化しそれぞれの高度な専門が野球界にも求められています。コーチは専門職で増加傾向です。その一方で、選手はユーティリティ化が進んでいる、という指摘があります。お股氏は「ポスト分業化時代」と呼んでいます。私は大いに唸り、「やっぱりそうだよな」と納得しました。
例としてジャイアンツ岡本和真選手が複数ポジション担えることや、大谷選手の二刀流、捕手の負担増による併用制度などを挙げています。私においては、「守備シフト発達でサードにも二遊間並のピポッド能力が求められ(P241)」ることは盲点でした。そうなると、我々指導者がどんな選手を育成するべきか、どんな選手が求められるかがなんとなくクリアになってきます。実際その点は理解し、動き出している最中です。
●とりあえず読むことからじゃない?
ともかく本書は納得できることばかり、そして考えさせられることばかりでした。我々高校野球指導者もあり方を考えさせられ、もっともっと進化しなければならない、そう思いました。簡単なまとめですが、ここで終わっておこうと思います。
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