監督とコーチ②
次はコーチのことを書こうと思って、自分の本棚をさらっと見てました。しかし「コーチ論」を書かれたものは案外少ないんですね。監督や指導者の本はありますが、コーチの本というのは、どうやらスポットが当たらないのかもしれません(Amazonを見ると出てきますが)。「人がやらないことはチャンス」ですから、参考文献が少ないなかで思うことを書いてみたいと思います。
●教えるに人間に求められるもの
大学生のとき、某ハンバーガーショップで4年弱アルバイトをしていました。最終的にマネージャーも1年半ほど経験したのですが、マネージャーになる前はトレーナーという、新人アルバイトに業務を教える役割を1年ほど経験させてもらいました。会社から勉強する時間を与えられて、色々勉強をするのですが、トレーナーには「4つの役割がある」ということを学びました。
その4つが、
「エキスパート」「ロールモデル」「ティーチャー」「コーチ」の4つです。
簡単に説明します。
「エキスパート」:マニュアル通りに正確で、ピーク時においても正確に行動できる(プロフェッショナル)
「ロールモデル」:他人の模範となるような行動・言動をしている
「ティーチャー」:新しい業務や商品の作り方などを正しく教えることができる
「コーチ」:やり方を一緒に考えたり、同じ方向を向いて考える
もう少し解釈を加えると、教える人間に求められるのは
・プロフェッショナル(専門性が高い)であること
・人間的に成熟していること(他人の模範となるような行動・言動)
・教えるプロセスを理解していること(段階を踏むなど、HOWの部分)
・同じ方向を向いて考えることができる
ということだと考えられます。今思い返せば、「確かにこれはそうだな」と改めて感じるので、某ハンバーガー店のマニュアル力はすごいですね。確かに新人で入って、教えてくれる人が怖かったりいい加減だったら嫌じゃないですか。野球においても選手と密接に関わり、人間的資質が求められるポジションであります。
●ティーチングとコーチングの違い
そこでよく誤解されがちなのですが、「ティーチング」と「コーチング」の違いです。ここがわかると、指導者業は結構円滑になるような気がしています。
以下を参考にしておりますので、こちらも御覧ください。
そして簡単なまとめとして、
「ティーチングは一方通行で、コーチングは双方向」
ということです。
結構あるじゃないですか、伝えたいことだけワーッと言ってしまうこと。私もよくあります。それは正直相手に押し付けるだけになってしまうので、相手に投げつけるだけになってしまいます。こっちが一方的にプルダウンしてる、みたいな感じです。そしてそれを受け止められない場合もあります。
コーチングとは、相手に合わせた形でボールを投げてキャッチボールをするのです。そこで最終的に普通にキャッチボールができるように、そしてお互いプルダウンし合う、みたいな。きちんと相手と同じ熱量で同じ方向を向いて、話を進めることです。
●コーチングは同じ方向を向くこと
コーチングに関しては『コーチングマネジメント』(伊藤守)がおすすめです。これは本当に名著です(Amazonレビュー3.7でレビュー数46)。
この本の一節にこんなものがあります。
「(コーチングのイメージとして)コーチとクライアントが同じキャンバスに向かって座り、コーチはクライアントが未来に向けてビジョンを描くのを手伝う」
これなかなかできないですよね。立場関係があるので、選手とコーチで必然的に上下関係ができてしまいます。だから、率直な意見や感想が聞けない場合があります。しかし、コーチが同じものを見ようとすることは大切です。同じ方向を向くこと、そして同じものを見ること、会話をすることです。否定せずに聞き、一緒に考えることです。
●結局野球に求められるコーチ像とは?
以前のチームで常々言われた言葉が、いつも頭にあります。
「いいか、監督は最後の味付けだ。コーチが下準備して、ほとんど完成させる。お客様に出すときに初めて、かるく塩をを振るのが俺だから。俺は最後の調整役なんだよ」
これを反対に考えれば、
「最後の調整以外は俺の仕事じゃないよ。だからちゃんと下準備して、いい食材を頼むよ。」
なんですよね。コーチの役割は、「選手を育成すること」にほかなりません。監督とのやり取りで「選手がいない」と発言が多々出てくる場合があります。それって、我々の職務放棄ではないですか?
「誰もいない」というのは、必要なときに準備できないということですから、コーチとして如何なものか、と。諸々事情があるとして、まだ発展途上であるとか、怪我明けであるとか、そういう付帯状況があるのかもしれませんが。事情があるにせよ、「提供できる食材をつくる」というのがコーチ陣の責務だと考えています。
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