野球消滅を読んで
中島大輔 『野球消滅』を読みました。面白かったので、ここに記録しておこうと思います。
『野球消滅』とはまたショッキングなタイトルですよね。全然知らない人は「感情論&拡大解釈による危機感煽る系」な本かと勘違いしてしまいそうですが、データや事実を根拠にして話が進んでいきます。「野球人口減少」がひとつのテーマですから、もちろんそれに関連する学童野球の野球人口のデータ、日本ハム大渕スカウト部長が作成した「チーム単位部員数の推移(新潟県高野連)」など、知らなかったことも数多くあり、大変勉強になりました。
そういった資料やデータだけでなく、地域の実情や現場の声も取材されていて、実際に現場で野球に携わっている方々がどんな様子なのかもよくわかります。そういった意味では、諸問題を身近に感じることができる内容になっていると思います。実際私は学童野球と関わることがないので、知らないことがたくさんありました。連盟の登録と大会について、幼い頃を思い出せば「〇〇市は☓☓に登録していないので、□□大会に出れないんだよ」と大人が会話していた気がします。
先に述べた学童野球だけでなく、学生野球・アマチュア野球からプロ野球などと、各カテゴリの構造がよくわかるようになっています。連盟間で縦割りで連結しているわけではなく、「ガラパゴス携帯」のごとく多岐にわたっています。正直私もよくわかっていないこともありますが、他カテゴリの連盟を知ることができますし、野球界の構造の複雑さがよく分かるでのはないか、と思います。これだけ横断的に書かれている本て、他にあるんですかね(ありそうだけど知らない)。
本書はそんな形で、「野球界の構造を明確にし、その構造から生み出される問題を捉える」ことが読む意味になるんだろうと思います。例えば投球制限の問題、結構みなさん議論されてますよね。実際改善するのって、結構たいへんなんですよ。
そこには各新聞社が絡み、高校野球で儲ける新聞もあればプロ野球で儲ける新聞もあります。私立は私立で生徒募集が絡み、公立は人数が集まらず苦しみ、高野連は「教育の一環」として高校野球を守りたい。それぞれがそれぞれで、利権を守りたいわけだったりします。だから、現状の高校野球のあり方を変化させるためには、ある意味それぞれからOKをもらわないといけないわけなんですね。したがって、「投球制限は投球制限だけの問題ではない」と私は思うわけで、これこそが「日本野球界が抱える構造的な問題」にあたるわけです。
我々現場の人間にとって、もしくは野球に携わる方々にとって、「野球が消滅する」のは嫌ですよね。しかしその危機に瀕しているわけです。不幸は足音を立てずにやってきます。崩れるときは、本当に早い。そうならないために、野球を残したい人たちの手で、声を上げる必要があると思うんですね。
「声を上げる」というは、無鉄砲に高野連を否定することではなく、現状を理解したうえで次の一歩を踏み出すことです。「高野連を炎上させる」のではなくて、「野球界がアップデートしていく」ためにともに歩みを進めるべきなんです。まずはその歩みの一歩として、『野球消滅』を読むことです。そして、野球界だけでなくこの本を広め、多くの方々に現状を知ってもらい、世論として野球を変革する動きをつくっていきたい。野球界が動かざるを得ない、そういう状況をつくりたい、そう思います。
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