「育成システム」を考える 育成計画
文科省発表「運動部活動での指導のガイドライン」(以下ガイドライン)から抽出して、育成システムを考えてみたいと思います。今日は「育成計画」です。ガイドラインの内容をベースにしつつ、良さげなものを考えてみたいと思います。まずはエッセンスから。
エッセンス
①学校が運動部(部活動)全体の活動目標を設定する
②運動部長(運動部の教員のトップ的な)が目標設定をする
③運動部長が学校と交渉しながら環境整備をする
④各部が目標設定をし、そのためのプランニング(計画)を立てる。
⑤各部がある程度フォーマットの定まった評価方法によって評価を受ける
⑥プランと実際の差異、達成箇所と達成できない箇所を明確にし、次年度に活かす
①学校が運動部(部活動)全体の目標を設定する
ガイドラインでは運動部の活動を学校も関与していく必要性があると記述されていました。プロ野球でいう「球団」にあたる学校が、経営目標というか、部活動に対して目標(要望)を伝えます。「活動を頑張ってほしい」というよりは、「どの点を学校が評価をしていて、重点的に取り組んでほしいか」を各部に伝えていくということです。学校経営という観点で言えば、部活動は教育活動であるとともに、募集の一環です。もちろん各大会で成果を発揮してもらいますが、何が募集につながっているかを学校が分析し、要望を伝えることで学校と部活動が分離してしまうことがなくなると思います。文科省は、部活動運営が教員ありきではなく学校が関わっていくことで、管理職が部活動の実態を認知し、指導していく重要性を説いています。
②運動部長が目標設定をする
運動「部」ですから、部長がいて然るべきだと考えました。プロ野球でいう「GM」のような、各部の編成を担う役職があってもいいのかなと思います。名前がつかなくともそういった役割を担っている場合もあると思いますが、部活動全体のマネジメントの中心となり、実際に実態を把握し、指導していく立場の人です。各部種目が違うのでまたがるのは難しいとは思いますが、各部の取りまとめをすることで運動部方針が定まっていくはずです。
③運動部長が学校と交渉しながら環境整備をする
合わせて運動部長が学校側と交渉して環境整備を行っていきます。各部からヒアリングをして、必要な環境を整えていきます。運動部としてトレーナーを採用したり、スポーツドクターを招いたり、外部指導員を斡旋したり、セミナーや講習会の開催をしたり、、、、。学校の運動部の発展を各部に任せるのではなく、顧問のマネジメント・交渉能力に任せるのではなく、学校組織として強化をしていく。学校はアウトソーシングが苦手な傾向にありますが、専門性の高い人材が現場には必要です。「怪我なく部活動に励んでほしいので、トレーナーを雇います」「定期的にスポーツドクターに検診に来ていただき、怪我の状態を把握します」みたいなことでしょうか。全国探せば学校でトレーナーを雇っているところはあると思いますが・・・。
環境整備は今後多岐に渡って行われていくと思いますが、「現場の自助努力」だけでは絶対に変わりません。システムの構築が最優先です。あまり現実的ではないかもしれませんが、他の部と共同して何かを行っていく、というのは重要だと思います。
④各部が目標設定をし、プランニング(計画)する。
学校目標があり、運動部の目標・方針があり、各部の目標があります。本来親会社、大元が方針を定めた上で、各部がそれらに則って詳細な方針を決定していくべきです。目標は中期~長期によるもので、1年単位~5年単位で考えるべきかと。
ちなみにガイドラインでは「勝つことのみを目指すことのないよう、生徒が生涯にわたってスポーツに 親しむ基礎を育むこと、発達の段階に応じた心身の成長を促すことに十分留意した目標 や指導の方針の設定が必要です」とあります。スポーツなので、「勝つこと」を含めた上で、多義的に目標を定めるべきだと言っているわけです。
したがってガイドラインでは、
「ヒアリングをしてニーズを把握した上で」
「勝つこと」「楽しむための土台をつくる」「心身の発達」
を目標設定として掲げ、プランニングしていくことが大事だと言っています。またプランニングの際には「バランスのとれた活動に配慮する」とあり、休息・休養の必要性も述べています。
1年間程度の計画は「ピリオダイゼーション」と呼ばれます(複数年にかかることも指すようです)。
『スポーツ医科学辞典』によれば、
準備期→専門的準備期→維持もしくは試合期→回復期
に分けられるそうです。
長時間の低強度のトレーニング活動から専門的な高強度で短時間の活動に変わる、とあります。また「オーバートレーニングを防止する助けにもなる」そうです。
どこがピークで、今何をやらなければならないのか。月々の、日々の活動は具体的に何をするのか。プレイヤーには日・週単位から年単位のプランを伝えておくべきだと考えます。また、見落としがちである「学校・保護者」にも最終的には「内容・ねらい・方法・時間」などを明記してまとめ、提示しておくことで、相互理解が深まるのではないかと考えられます。
⑤各部がある程度フォーマットの定まった評価方法によって評価を受ける
「計画」を立てたわけですから、評価をする必要があります。他競技は正直わかりませんが、野球を前提に考えてみたところ、
「大会成績・練習試合成績・練習内容・時間・選手の技能の向上・身体能力の変化」
を少なくとも学校では年単位で評価する必要があると思います。部活動単位であれば、本来はシーズンごと、年4~6回の評価は必要だろうと私は考えています。どんな能力の選手に、どんなねらいをもった指導をして、どんな結果が出たのか。それが夏の大会で1回戦敗退だったとしても、野球未経験者が通算15本のHRを打てるようになったとか、身体能力が大幅に向上したとか、プレイヤー自身を評価することができます。
また、部活動以外の活動や実績として
「学校の成績・進学実績・進学後の活動・慈善活動」なども評価対象であると考えています。
⑥プランと実際の差異、達成箇所と達成できない箇所を明確にし、次年度に活かす
最終的には、またそれを修正し、次年度に活かすことになります。データが蓄積されていけば、わかることが増えていきます。年々バージョンアップした指導を行えるようになりますよね。
育成計画を立てるということは、
→将来を想像すること
→プレイヤーの可能性を見つけ、育んでいくこと
→計画した以上は変更できない(他者の目がある、やるしかない)、ということ
→やるべきことが明確になること
→チームが一枚岩になれるということ
でもあります。
計画を立てるというのは簡単ではありませんし、知識もパワーも必要になります。しかしその場限りの指導にならないように、選手・チームを想像を活用してデザインしていく。やるべきことはまだまだありそうです。続きは後日。