2019年1月6日日曜日

運動連鎖


私が投手を指導する際に、メカニクスにおいて大切なのは3つあると考えています。

1 並進運動(横の移動)
2 回転運動(骨盤と肩甲骨の回転)
3 運動連鎖(各部分を協調させて投げる)

投球動作では、横の移動で生まれたエネルギーを効率よく回転動作につなげ、ボールの速度を大きくします。うまく横移動する必要があり、その横移動のエネルギーを回転動作に変換して、ボールをより早く動かさねばなりません。それも部分だけを意識するとうまくいかず、各部分を協調させて投げる必要があります。ひとまず今日は、運動連鎖について、です。













♢運動連鎖とは運動のつながり
スポーツでは中心部で生まれた力やパワーを、狙いや目的に応じて手足・ボール・ラケットに伝達する場合が多いです。Twitter上ではメカニクス論が飛び交いますが、実際には部分だけの動きではなく、身体各部分の動きを協調させる必要があります。

「協調」というと難しいですが、ギッタンバッコンではなくスムーズに動いているかどうか、ぐらいで捉えてもらってもよいと思います。我々が目にする機会が多いトップアスリートの動きって、すごいキレイですよね。トップアスリートの動作は、一種の機能美・芸術作品だと思っています。エネルギーが正しく伝達され、目的の方向に力が発揮できているからです。


♢エネルギーのロスをなくす
球速も結局はエネルギーなので、ボールに大きいエネルギーが伝達されればOKですよね。ボールに触れているのは手なので、手にエネルギー伝達されることが必要です。そうしてさかのぼっていくと、いわゆる「下半身」までやってきます。

脚→腰→肩→肘→手首→ボール

という順に、速度(エネルギー)が伝達されていきます。その結果、末端がめっちゃ速くなる。もうちょっと単純に言えば、順番で速度が大きくなりますよ、って感じです。このエネルギー伝達が無駄なく行われているか?速度が大きくなる順番が間違えていないか?というのが、ひとつ見るポイントになります。

色んなパターンがありますが、代表例として
・肩が動いていないのに肘や手を出そうとしてしまっている
 (前でリリースしろ!肩を開くな!の弊害)

よく見かけるのはここらへんでしょうか。原因はさまざまですが、いずれにせよ本来生まれるエネルギーをロスしてしまっています。私は「運動連鎖が切れてしまってる」と勝手に呼んでますが、単純には「順番に動いてない」ってだけです。そこをつなげるために、試行錯誤するわけです。


♢さきっぽめっちゃ速い(末端速度)
この運動連鎖、発生させるにはポイントが2つあるらしいです。

①末端部の慣性(質量・慣性モーメント)は中心部よりも小さいこと
②中心部は末端部よりも大きな力やエネルギーを発揮できること

投球に置き換えてもうすこし簡単にいいますと、
「前腕ムキムキで背筋とかが無かったらアカンで!」ということですかね。

はい、ビスケット・オリバ(グラップラー刃牙)さんです。
もちろん発揮する力はバカでかいとはおもうのですが、投球するには不向きです。なぜかといえば、「前腕・上腕が重くて速く動かない」からです。単純ですね。



この「末端速度」を大きくすることが、投球動作のキモであると言えるでしょう。



♢最後に
投球動作をみているときは、こんな事を考えています。

①エネルギーロスがないか?どこかで滞りがないか?
②エネルギーの方向はキャッチャーに向いてるか?
③ロスしているとすれば、どこの部位か?それはなぜか?
④似たようなタイプと比較して、大きくロスしているか?
⑤ボールが速くないのは、エネルギーロスか?エネルギー生成できていないか?


「理想に近づけていく」というよりかは「本人のもっている能力を最大化させていく」
イメージのほうが、能力開発はしやすいかもしれませんね。


<参考文献>
・朝倉書店 バイオメカニクス20講  阿江通良・藤井範久
・市村出版 スポーツ動作学入門   石井喜八・西山哲成


seVen @sevenislandsz1  
野球の物理学や力学について、seVenさんから学ばせもらっています。大変参考になるTweetが多いので、勉強される方はぜひ。

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