私は常々「合理的で効果的な練習がしたーい!」って思っています。野球界は結構曖昧な言葉が多いですよね。「体を開くな」「ヘッドを下げるな」「下半身を使え」とか。私があまり上手じゃなかったので、「開いているぞ」と言われても「どこが?どう開いてるの?じゃあどうしたらいいの?」と思っていました。
♢「じゃあどうすればいいの?」
いつも僕が思っていたのは、「僕が下手なのはわかった、今のうごきが悪いのもわかった、じゃあどうしたらいいの?」ということです。「そこは自分で考えようよ」というとこでもありますが、考えているうちに現役生活が終わってしまいました。スポーツ選手は時間との戦いです。できる限り早く上達し、結果を出すことが求められるわけです。
♢合理的で効果的な練習がしたい!
どうして素振りをしているのにうまくならない?練習しているのにうまくならないんだろう?そんな疑問を抱えたまま、引退してしまいました。「もっと練習せい!」で解決かもしれないんですが、偏屈な私は納得できなかったのです。いろいろ考えた結果、指導者の道に進むことになるのですが、「合理的で効果的な練習がしたい!きっともっと簡単にうまくなる方法があるはず!」と思って勉強の日々がはじまりました。
♢ようやく登場、「スポーツバイオメカニクス」
さまざまな経路をたどって勉強し、ある学問に到達しました。それが「スポーツバイオメカニクス」です。
スポーツバイオメカニクス=身体運動の力学
力学(物理学)・解剖学・生理学の基礎知識に基づいて、身体運動の仕組みをよりよく理解し、「合理的な運動とは何か」を究明する学問である。
(化学同人 『スポーツバイオメカニクス』より)
ちょっとむずかしい。
「物体の動き(力学)と、骨とか筋肉とかのつくり・動き(解剖学)と、体の臓器の動き(生理学)の知識をつかって、スポーツを調べるよ」みたいなことです。曖昧さを排除し、より身体運動を明確なものにしていくわけです。「なんでこの選手は球が速いのか?」に対して、科学的根拠を打ち出すことができる学問でもある、ということになります。
♢スポーツバイオメカニクスの目的
最終的な目的は、「パフォーマンスの向上と障害予防」です。
ボールの速い投手はどうやって投げてるんだろう?→研究する
→速いボールを投げる投手の共通点わかったよ!
→君もそれに近づけていこうね!
みたいなことです。
バイオメカニクスの研究者がアスリートを対象に研究をし、どんな動きをしているのか?を調べます。そこで算出されたデータをもとに、「共通点」を見つけ出し、普遍的なものにしていく。
♢根拠に基づいた指導ができる
バイオメカニクスはその普遍的なもの・知識・知恵を蓄積しています。それが集積されて、我々がそれを知ることができるとなると、「根拠に基づいた指導」ができることになります。
コントロールが悪い投手
→コントロールが悪いのは下半身が使えてないからだ!
→まずは走ろう!そして投げ込みをしよう!
にはならず、
(動作を観察してみて)
→コントロールが悪い投手
→コントロールが悪いのは、軸足の使い方に問題があるようだ!
→ほら、この選手はこうで、君はこうなってるよね
→ここの動作ができるように練習してみよう!
♢その方が効果的だし、効率がいい
投げ込みしたっていいし、素振り1000回させてもいいんですよ。でも、とにかく時間がないです。その間で見つかることもあると思いますが、時間対効果が悪いです。その点バイオメカニクスを学ぶことは、指導者にとっても選手にとってもWin-Winではないかと思うんです。少なくとも指導者にとっては、
・根拠をもって指導することができる
・パフォーマンスアップの要因を知ることができる
・再現性を高めることができる(選手の能力に依存しなくなる)
・時間短縮につながる
こんなメリットがあると考えています。というか、基本勉強して損することなし。
♢スカウティング&チョイス合戦から脱却へ
高校野球の現場は、スカウティング&チョイス合戦です。いい選手を獲得し、選手起用と監督の采配で勝つ時代です。もっと厳密には、スカウティングに依拠している割合は大きいです。もちろん必要な要素ですが、高校野球は「育成」の観点が完全に欠如しています。
そうなったときに、スポーツバイオメカニクスに基づいて指導することができれば、わざわざ大げさなスカウティングをしなくてもよいわけです。合理的な指導に基づいて、効果的な練習を行い、パフォーマンスアップし、試合をする。選手も上手になって嬉しい、指導者も嬉しい。いいことしかないと思いますよ。
♢最後に
とはいっても、私もまだまだ勉強中でわからないことだらけです。物理的考察ができない私には、地獄でした。一通り本は読みましたが、やっぱり難しい。私もきっちり勉強していきたいと思っています。
<私がもっているスポーツバイオメカニクスの本>
・スポーツバイオメカニクス20講 朝倉書店 阿江通良、藤井範久
手軽に持ち歩けるサイズなので便利です。丁寧な本でして、結構重宝しています
・スポーツバイオメカニクス 化学同人 宮西智久
入門書シリーズのうちの一冊です。物理的考察が多く、「わけわかんねぇぜ・・・」と思いながら読みました。でも比較的平易に書かれているので、読みやすさはあると思います。今回記事を書くにあたって、大いに参考にさせてもらいました。
・スポーツバイオメカニクス入門 絵で見る講義ノート 杏林書院 著者:金子公宥
文字がすくなく、絵が多いのでわかりやすいです。これを読みながら、わからないことを調べていくことをやりました。ザッと読みたい人にはよいかもしれません。
・スポーツバイオメカニクス 身体運動の科学的基礎 杏林書院 金子公宥・福永哲夫
めっちゃ分厚いです。はじめに読むと確実に挫折パターンです。解剖学・生理学・物理学の説明が上記のなかでも最も詳細です。一通り勉強してから読むとよいかもです。
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